離婚は追認しても親権は認めないときの4つの方法

勝手に出された離婚届、あるいは無断で出された離婚届での離婚は無効でも、役所に受理されてしまえば離婚は成立して戸籍に記載されます。

離婚自体を無効とするには、協議離婚無効確認調停を申し立てるのですが、一方的に離婚届を出す相手とはやり直せないと考えるなら、離婚を後から認めてしまう追認もできます。

しかし、離婚届における親権者指定が、自分の望む親権者ではないときは、離婚は追認しても親権者を認められない場合もあるでしょう。そこで、親権だけを争うにはどうしたら良いか考えてみます。

※この記事全体で離婚届とは協議離婚届のことです。

現在の親権者を確認する方法

親権者を確認するには、子の戸籍謄本を取るのが一番簡単です。戸籍届書記載事項証明書で離婚届を確認する方法もありますが、届書は原則非公開で、証明書を得るには正当な請求理由を必要とするので、親権者の確認だけなら戸籍謄本で十分です。

子の戸籍謄本とは、子が自分の戸籍に入っているなら自分の戸籍謄本、相手の戸籍に入っているなら相手の戸籍謄本です。離婚後でも親として子の戸籍謄本を取ることはできるので、子が相手の戸籍に入っていても問題ありません。

参考:離婚後に相手の戸籍を取るには?

子の戸籍謄本の身分事項欄には、親権者を定めた日と親権者が父か母で記載されています。戸籍がコンピュータ化されていない場合でも、日付と共に親権者を「父(または母)と定める旨父母届出」といった記載があるので確認できます。

必要な手続は戸籍訂正と親権者指定

離婚届の受理によって、親権者が現に戸籍へ記載されてしまっているので、戸籍の記載を抹消する訂正申請と、協議または家庭裁判所による適法な親権者指定が必要です。

つまり、親権者が決まっていない状態に戻して(ただし離婚は成立している)、改めて親権者を指定するということです。

その前に、現在の戸籍の記載が、はたして有効か無効かという議論は当然あるでしょう。この点については、親権者指定が協議未了のまま離婚届が出されると、親権者の指定は無効であるとした判例があります。

判例に従えば、親権者指定が無効なら共同親権ということになりますが、それを元夫婦の一方が役所の窓口で訴えたところで、容易に戸籍訂正されるとは到底思えません。

戸籍訂正を認めてしまうと、無効ではない親権者指定も、元夫婦の一方からの訴えで自由に抹消できることになっておかしいですよね。

役所の立場では、離婚届による親権者指定が有効か無効かなど判断できず、結局は家庭裁判所の判断を求められます。

親権者の戸籍訂正は簡単ではない

戸籍法では、戸籍の訂正について次のように定めています。

戸籍法 第百十三条

戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを発見した場合には、利害関係人は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍の訂正を申請することができる。

戸籍法 第百十四条

届出によつて効力を生ずべき行為について戸籍の記載をした後に、その行為が無効であることを発見したときは、届出人又は届出事件の本人は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍の訂正を申請することができる。

戸籍法 第百十六条第一項

確定判決によつて戸籍の訂正をすべきときは、訴を提起した者は、判決が確定した日から一箇月以内に、判決の謄本を添附して、戸籍の訂正を申請しなければならない。

戸籍法第113条と同法第114条は、家庭裁判所の許可で戸籍を訂正する方法、同法第116条第1項は確定判決で戸籍を訂正する方法が規定されています。この場合、前者の家庭裁判所の許可とは、戸籍訂正許可審判を意味します。

親権者の戸籍記載は、届出によって効力を生じる(創設的届出といいます)離婚届に起因するので、戸籍法第114条によってその行為が無効だとして、戸籍訂正許可の審判を受ければ足りるように思えます。

ところが、そう簡単な問題ではなく、戸籍訂正許可審判は別表第1事件に該当し、紛争性の高い戸籍訂正を前提にしていません。

戸籍訂正許可の審判は当事者一方の申立てによることから、紛争性が低く戸籍記載の誤りが明白で、戸籍訂正で与える影響も軽微といった場合に適用される性質があります。

明らかな紛争性を伴い、子の身分が不安定になる親権者の戸籍訂正では、一方の申立てによる簡易な審判手続が許されるかどうか疑問です。

そこで、戸籍法第116条の確定判決となるのですが、そのためには離婚届で指定された親権者について、協議が無かった又は協議が整っていないとして、親権者指定協議無効確認の訴えを起こします。

この訴えは、人事訴訟として法律上の規定はなくても、人事訴訟の1つとして解釈上認められており、確定判決を得られれば戸籍を訂正できます。

親権者の指定は協議・調停・審判

元々の争いは、勝手に又は無断で出された離婚届ですが、離婚を追認する以上は協議離婚と同様に、協議して親権者を決めるのが本来の道筋です。

しかし、元夫婦のどちらも、親権者を自分とする又は相手とする主張を譲らないなら、協議が紛糾することは間違いありません。

もっとも、協議で決まったところで、既に離婚届が受理されて戸籍に記載された親権者を変更するためには、家庭裁判所の許可を必要とします。

したがって、戸籍訂正が許可されて暫定的な共同親権に復帰しなければ、元夫婦の協議による親権者指定はできない理屈になります。

現在の親権者を認めて他方に変更する
→親権者の変更は家庭裁判所の許可が必要

現在の親権者を認めず共同親権に戻して親権者を指定する
→親権者の戸籍記載を抹消する戸籍訂正は家庭裁判所の許可が必要

このように、どちらでも家庭裁判所が関与するはずです。親権者の指定・変更は別表第2事件なので、調停と審判のどちらも申し立てることができます。

しかしながら、了承なく離婚届を出す相手とは調停の成立を期待できず、審判から申し立てても調停になる可能性は低いと考えられ、もっぱら審判で決することになるのでしょう。

協議離婚無効確認調停は使えない

協議離婚無効確認調停では、離婚自体が無効になるので必然的に共同親権に戻り、その後は離婚するとしても、改めて親権者を定めます。

しかし、無効な離婚を追認するのは、自ら有効な離婚としてしまうので、協議離婚無効確認調停とは矛盾しています。

自ら有効な離婚としながらも、親権者の協議が済んでいないことを理由に、離婚全体を無効にできるように思えるでしょうか。

裁判所は、協議離婚成立と親権者指定の有効性は分けて考えられており、離婚届での親権者指定が無効でも、離婚は有効に成立するとしています。

これは民法第765条第2項が根拠で、法令違反がある離婚届でも、受理されると離婚の効力は妨げられないと規定されているからです。

民法 第七百六十五条

離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第七百三十九条第二項の規定及び第八百十九条第一項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
2  離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を妨げられない。

親権者を決めずに離婚はできませんが、協議離婚の手続上では、離婚届に親権者の記載を必要とするだけに過ぎません。

夫婦に離婚の意思があり、離婚届を出す意思もあったのなら、親権者が協議されないまま無断で指定された離婚届や、親権者の記載が改ざんされた離婚届でも離婚は成立します。

極端なことを言えば、離婚届に親権者の記載がなくても、役所が受理すれば離婚は成立します(普通は受理しませんが)。

一度有効に成立した離婚は、無効とは訴えられないことになりますので、追認して有効になった離婚も、親権者の協議未了を理由に無効は訴えられないと考えられます。

具体的に考えられる4つの方法

協議離婚届が受理された後に、離婚を追認しても親権者を無効だとして争う方法には、次のようにいくつか考えられます。

  1. 戸籍訂正許可の審判後に親権者指定
  2. 親権者指定協議無効確認訴訟の確定判決後に親権者指定
  3. 単に親権者指定調停・審判を利用
  4. 親権者変更調停・審判を利用

それぞれ手続が異なるように、効果も異なる選択肢があるので、安易に1つを選択しないようにしましょう。

なお、再婚して共同親権に戻し、親権者を決めてから離婚する方法もありますが、相手が応じるはずもないので現実的ではなく、ここでは除外しています。

方法1:戸籍訂正許可の審判後に親権者指定

戸籍訂正によって、現在の親権者記載を抹消し、新たに親権者を指定して届け出ることを目的とします。

この方法では、まず戸籍訂正の許可審判申立てが認められるかどうかの問題と、認められて許可されたとしても、親権者の指定について協議が整うかどうかの問題があります。

戸籍訂正許可審判の申立ては、前述の通り紛争性が高いと認められにくく、親権者の指定も協議できなければ、調停や審判(争いが激しく実質的には審判)で決めることになります。

この流れは二度手間で、戸籍の親権者が無効だとして親権者の指定を家庭裁判所に申立て、その審理の中で戸籍の親権者が無効と判断され親権者が指定されてから、戸籍訂正の許可審判を申し立てる運用も考えられます。

先に親権者が決まれば争いはなくなるので、戸籍訂正の許可審判も妥当ですし、たとえ戸籍上の親権者が無効だとしても、親権者指定調停・審判で戸籍と同じ親権者に決まれば、もはや戸籍訂正は必要なくなって合理的です。

方法2:親権者指定協議無効確認訴訟の確定判決後に親権者指定

訴訟となりますが、親権者指定協議を無効とする確定判決によって戸籍を訂正できるので、暫定的な共同親権に戻ります。

その上で、親権者を協議または調停・審判で定め、新たに決まった親権者(変わるとは限らない)を指定して届け出ます。

この場合でも、親権者指定協議が無効であったことの確認を目的とするのではなく、最終的には親権者が変更されることを目的としています。訴訟までする割には、得られる効果が小さいと考えるでしょうか。

しかし、戸籍訂正許可の審判に対しては、申立人を除く利害関係人からの即時抗告が認められており(家事事件手続法第231条第4号)、審理で親権者指定協議が無効と判断されても、争いが続くかもしれません。

対する確定判決は、それ以上争うことを許さないので、少なくとも親権者指定協議が無効であることは確定する違いがあります。

こうした違いはあるにせよ、結局は親権者の変更を目的としている以上、離婚を追認するのなら親権者変更調停など他の方法でも代えることができるでしょう。

方法3:単に親権者指定調停・審判を利用

戸籍訂正を必要とせず、親権者指定の調停または審判によって、役所に届け出て戸籍の訂正と親権者の指定を行います。この方法が許されるのなら、手続が比較的簡便で当事者の負担が小さくて済みます。

協議がされていない離婚届での親権者指定を無効(現在の戸籍の記載は無効)とする前提があり、新たな親権者指定によって当然に訂正されるべきではありますが、役所の戸籍担当が戸惑うかもしれません。

なぜなら、調停調書または審判書が添付された親権者変更の申請となるはずが、この方法では親権者指定で申請されるからです。

この点、親権者指定の審判書であっても、理由の要旨として親権者指定協議が無効だと記されていれば、戸籍訂正も可能なのかもしれません。実務上でどのように行われているかは不明です。

※判明したら追記する予定です。

方法4:親権者変更調停を利用

考えようによっては最も現実的なのが、親権者変更調停・審判によって現在の戸籍の親権者を変更する方法です。

唯一の懸念は、変更を前提としているために、現在の親権者も追認したとみなされる点で、そのように説明しているサイトも多いですが、それほど重大視する必要はないかもしれません。

戸籍の親権者は無効だと争い、一時的な共同親権に戻すのが理想でも、最後は家庭裁判所に親権者を指定してもらわなくてはならず、これは事実上において親権者の変更を訴えるのとそれほど変わらないからです。

親権者の変更が認められないなら、親権者を無効とした新たな親権者の指定が希望通りにされるとも思えません。

親権者の指定でも変更でも、親権者としての適性と、子供にとってより良い環境はどちらか家庭裁判所に判断を仰ぐ点は変わらず、指定と変更で親権者が異なることは少ないでしょう。

即ち、手続上での違いと現在の無効な親権者の追認があるとしても、行き着く先は同じだということです。ただし、現在の親権者を追認する懸念はさておき、親権者の指定と変更で、家庭裁判所の判断が異なるなら話は全く別です。

通常、親権者の指定は離婚調停に付随して申し立てられるので、これからの子供の成育環境として相応しいと判断された親権者が選ばれます。

ところが、親権者の変更においては、現在の環境が変化することで子供に与える影響を考慮するため、変更するだけの重大な理由がなければ認められにくい性質を持っています。

しかし、親権者指定協議無効確認から親権者の指定という流れでも、既に元夫婦が別居しているなら子供の現況を考慮しますので、大よそ指定も変更も変わりないと思われます。

こうした特性から、時間が経てば経つほど子供が現在の環境に馴染んでしまい、指定または変更が容易ではなくなるので、できるだけ早く手を打ちましょう。

まとめ:離婚を追認して親権を争う場合

  • 協議されていない親権者指定は無効
  • 戸籍訂正は家庭裁判所の許可なくできない
  • 戸籍訂正と親権者指定は別の手続が基本
  • 親権者指定または親権者変更の調停・審判が必要
  • 時間が経つほど親権者は変更されにくい

子供にとって親権者が決まらない状況は不安定で、親の都合で振り回されるのは良くありません。親権を絶対に譲らない覚悟でも、離婚をしたら必ず親権者を定めなくてはならないので、最後は家庭裁判所判断です。

特に、子供と離れて暮らしている側が離婚後に親権を得るのは難しく、離婚の追認によって親権で不利になりそうなら、離婚を追認することなく協議離婚の無効を訴えて共同親権を目指した方が良いかもしれません。

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