離婚届を勝手に出されたら?

協議離婚においては、夫婦の離婚意思が前提であることから、夫婦の一方がもう一方の意思を無視して、離婚届を提出しても離婚は無効です。ここで、離婚が無効であるからといって、離婚届が受理されなかったと同じではないことに注意が必要です。

勝手に出された離婚届でも、役所は法令違反がないか確認して、記載に不備が無ければ受理しますし、離婚届が真正であるか(夫婦に離婚意思があるか、偽装されていないか)など確認はしません。

つまり、勝手な離婚届が提出されて、無効な離婚だと明らかになったところで、役所は受理日に遡って不受理とすることはなく、受理決定は覆らないのです。そのため、戸籍上の離婚には影響を与えず、役所に無効な離婚を訴えても何も変わりません。

離婚届は取り下げることができない

離婚届には取下げが認められておらず、協議離婚では離婚届が受理されると離婚が成立して戸籍の記載が変更されることから、離婚を無効として戸籍を訂正してもらうには、家庭裁判所の許可が必要になります(戸籍法第116条第1項)。

流れとしては、離婚届の受付(受領)→審査→受理→戸籍の記載なので、受理決定の前なら取り下げることは可能とされていますが、受付から受理までの期間は一般に短く、受理されれば戸籍の記載がなくても取下げはできません。

したがって、戸籍の記載がされておらず、離婚の記載がある戸籍謄本が取得できない状態であっても、受理されていれば取下げはできないということです。

また、離婚届の記載に不備があるのを見逃し、届出人に補正をさせずに受理されたとして、不備のために戸籍の記載ができないときは追完を求められます。この場合でも、やはり受理された後なので、離婚届の取下げは認められません。

したがって、協議離婚無効確認調停を申立て、夫婦が離婚は無効であると合意し、家庭裁判所の審判(合意に相当する審判)を受けて確定させる必要があるのです。

勝手に離婚届を出された側にとっては実に面倒で迷惑な話ですが、受理された離婚届で成立した協議離婚を無効にするにはそれ以外の方法はなく、相手が調停に応じなければ合意に相当する審判ができないので、提訴して確定判決を得るしかありません。

なお、戸籍法第116条第1項には、判決の確定を要すると規定されていますが、合意に相当する審判が確定すると、確定判決と同一の効力になるため(家事事件手続法第281条)、審判書と確定証明書の提出があれば要件を満たします。

戸籍法 第百十六条第一項

確定判決によつて戸籍の訂正をすべきときは、訴を提起した者は、判決が確定した日から一箇月以内に、判決の謄本を添附して、戸籍の訂正を申請しなければならない。

無効な離婚に時効など存在しない

離婚届を偽造されたなど、夫婦の離婚意思がない離婚届による離婚は、当然に無効になります。最初から無効な離婚なので、時間が経ったから有効になることはなく、離婚を無効とする訴えはいつでも起こすことが可能です。

勝手に離婚届を出されるパターンには、離婚届を偽造された場合と、自署押印した離婚届を無断で出される場合に分かれますが、偽造された場合には原本が役所で保管されているので、筆跡等により偽造である証明は可能でしょう。

それに対して、自署押印した離婚届を無断で出されたケースでは、離婚届そのものは真正なので、届出の時点で離婚意思が無かったことを訴えなくてはなりません。

離婚意思は後から覆すことはできる?

お互いに離婚意思があり、離婚届に自ら署名押印していても、やっぱり離婚しないと思いとどまるケースは、離婚を話し合う夫婦において少なくないでしょう。結婚と同じように離婚も人生の一大事で、簡単に決めるべきことではないからです。

しかしながら、夫婦の離婚意思によって作成された離婚届を使って、有効に離婚を成立させるには何の障害もありません。それでも、離婚の意思が届出まで継続していないと離婚は無効とされるので、離婚の無効を訴えることは可能です。

ただし、自ら署名押印していても、届出までに離婚しない意思を表明しておらず、単に思っているだけでは意味がありません。相手に離婚の意思がないことを伝えていれば、自署押印した離婚届で成立した離婚でも無効を訴えることができます。

既に離婚届が出されているならすぐに対応

では、離婚を思いとどまったのに自署押印した離婚届が既に提出されていて、相手に意思を伝えられなかったときはどうなるのでしょうか?

例えば、相手に離婚届を渡してその日のうちに届出された場合は、やっぱり離婚したくないと思っても遅いことになります。そうは言っても、いつ離婚の意思を失ったか誰にもわかることではなく、理屈上は届出の時点で離婚意思が無かったと主張できます。

一見無理なように思えますが、役所でも離婚届を受け付けるときに当事者の離婚意思を確認しませんし、ましてや相手は届け出る前に離婚意思を再確認などしないでしょうから、届出時点の離婚意思は当人にしかわかりません。

この場合、相手への撤回表明や不受理申出をしていなければ、離婚の届出を容認していたとしか思えないので、離婚届の提出から時間が経っているほど不利です。争った結果、届出の時点で離婚意思があったと(実際は無くても)判断されれば絶望的です。

ですから、意思の表明が無かった理由は後から考えるとして、まずは協議離婚無効確認調停を申し立ててみましょう。後からいくらでも覆すことができるほど、婚姻も離婚も簡単なものではなく、速やかに手を打つことが大切です。

  • 0
  • 0
  • 0
  • 0
  • 0