協議離婚の有効な離婚と無効な離婚

協議離婚での離婚届による有効な離婚は、夫婦の双方が離婚の意思と届出の意思を持っていることが前提になっています。そのため、離婚届が提出される時点で、少なくとも一方に離婚意思がないだけで、離婚は無効になります。

しかし、自署した離婚届を相手に渡した後に、離婚の意思が無いことを告げず、届出されてから無効と主張しても、かなり厳しい展開になるでしょう。

相手に自署の離婚届を渡している時点で、少なくとも届出の意思はありますし、届出までに撤回しないことが離婚を容認(合意)しているのと等しいからです。

ここでは、離婚届によって離婚がどのように扱われるのか説明します。

令和3年9月1日以降、戸籍の届書に押印は必要なくなります(押印しても構いません)。随時修正する予定ですが、令和3年9月1日以降は押印についての記載を読み飛ばしてください。

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離婚の成立と離婚の有効・無効

有効な離婚は効力のある離婚、無効な離婚は効力のない離婚を意味します。これは説明するまでもないでしょう。

一方、離婚届が受理されることで離婚は成立しますが、離婚の成立には、離婚が有効であるか無効であるかは関係ありません。

つまり、離婚の成立と離婚の有効・無効は別に考える必要があるのです。ここをしっかり押さえておかないと混乱します。

  • 協議離婚の成立:離婚届の受理
  • 有効な協議離婚の成立:夫婦に離婚意思の合致がある離婚届の受理

離婚の成立要件に離婚意思が含まれないことは、夫婦の離婚意思と無関係に、離婚届だけで離婚が成立する結果をもたらします。

ゆえに、離婚に反対する相手配偶者の意思を無視して、勝手に出された離婚届でも、役所が受理すれば(無効であっても)離婚は成立するということです。

ただし、一方に離婚意思はないのですから、成立した離婚は無効だとわかりますよね。これが有効な離婚と無効な離婚の違いです。

無効な離婚でも、既に離婚は成立してしまっているため、無効確認の訴え(協議離婚無効確認調停)により、確定判決(または調停成立)を経て、戸籍訂正することになります。

民法では、離婚が届出によって効力を生ずると規定しているので、離婚届だけでも有効な離婚が成立するように思えますがそうではありません。

離婚届によって発生する離婚の効力は確定的ではなく、無効原因があれば覆されます。

役所は離婚の意思を確認しない

離婚届が提出されたとき、戸籍担当の職員は離婚届に記載の届出人(夫婦)について、離婚の意思があるかどうかは確認しません。また、離婚届の署名押印が当事者によってされたかどうかも確認しません。

戸籍法の改正によって、市区町村長は、必要があれば届出人その他の関係者に対して、質問または文書提出を要求できることが明文化されました(戸籍法第27条の3)。

ただし、この規定を設けるにあたっては、調査(審査)権の行使が、従来から行うことができる範囲内にとどまるものであって、範囲が拡大されるものではないとされています。

つまり、記載に不備がなく、疑義が生じない離婚届において、両当事者の離婚意思を積極的に確認するような運用ではないということです。

明らかに署名の筆跡が酷似しているなど、偽造が疑わしい状況を除き、離婚届は適法に扱われます。そして、適法な記載の離婚届は、たとえ夫婦の一方に離婚意思がないとしても、受理されて戸籍の記載がされます。

さらに、離婚届の押印は認印で良く、印影が異なる印鑑を用意するのは簡単ですし、署名は協力者がいれば簡単に筆跡を変えられるため、偽造した離婚届によって離婚を成立させるのは、実は難しいことではない現実があります。

当事者の一方が意図しない離婚届での離婚成立を防ぐため、離婚届には不受理申出の制度があります。勝手に離婚届を出される可能性があるなら検討してみましょう。

参考:離婚届などの不受理申出と不受理申出書の書き方

形式的な離婚意思でも有効

夫婦の一方が離婚をしたくないときは、相手に離婚しない意思を示すだけで、離婚届が出されても協議離婚は無効です。

では、夫婦の両方に実質的な離婚の意思がないのに、法律上の婚姻関係を解消する目的で、離婚届を提出するとどうなるでしょうか?

実質的な離婚の意思がない例

  • 内縁関係の夫婦が、婚外子(非嫡出子)としない目的で出産前に婚姻し、出産後に離婚する
  • 夫婦別姓のために離婚するが婚姻中と同じく夫婦として暮らす
  • 現在の氏を他方の旧姓へ変えるために一度離婚し、他方を戸籍筆頭者として再婚する
  • 離婚することで財産分与をして、債権者からの回収を免れようとする

これらの場合、夫婦に本来の意味で離婚意思はなく、離婚が目的を達成するための手段でしかありません。しかしながら、法律上の婚姻関係を解消するために、離婚届を出すという形式的な意思だけでも、判例は離婚を有効としています。

もとより、協議離婚では離婚理由を問われず、離婚理由によって離婚の有効・無効が左右されることはないのですから、形式的な意思でも離婚を有効にしないと、全ての協議離婚で離婚理由を確認しなくてはなりません。

形式的意思による離婚には無効説もありますが、現在のところは有効説が有力になっています。

有効な協議離婚をおさらい

協議離婚が有効になるのは、次の2つを満たした場合です。

  1. 夫婦に法律上の婚姻関係を解消する意思がある(理由は問わない)
  2. 夫婦の意思の合致で離婚届が提出された

仮装離婚(形式的な意思による離婚)でも1に該当し、一般に考える離婚(実質的な意思による離婚)は、当然に1が含まれています。また、2については、夫婦が婚姻解消のために離婚を届け出る意思があるかどうかです。

ただし、協議離婚が離婚届で成立するのは周知の事実なので、夫婦に離婚の意思があれば届出の意思もあると考えられますし、届出までに一方が離婚意思の欠如を表明しない限り、離婚は有効とみなされても不思議はありません。

ちなみに、詐欺による協議離婚は、騙されたとしても離婚の意思があって離婚届が出されるので有効であり、強迫(脅迫)の場合でも、やむを得ないとはいえ離婚に同意して離婚届が出されるので、やはり離婚は有効に成立します。

どちらも、真の意味で離婚の意思はないのですが、離婚届が届け出られる時点では離婚の意思が存在して、有効になるということです。このような詐欺・強迫による協議離婚を覆したいときは、離婚の無効ではなく取消しを求めることになります。

参考:

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