戸籍訂正許可

戸籍法第113条、第114条には、家庭裁判所の許可により戸籍の訂正を申請することができると規定されています。この戸籍の訂正を申請するための許可をするのが、戸籍訂正許可の審判です。

戸籍は公称上の身分関係を示す重要なものですから、当事者や利害関係人からの安易な申請で訂正されるべきではなく、家庭裁判所が介在することで訂正申請の正当性を担保しているとも言えるでしょう。

戸籍訂正の事由(理由)は限定されており、その事由は次の通りです。

  • 戸籍の記載が法律上許されない場合(戸籍法第113条)
  • 戸籍の記載に錯誤または遺漏がある場合(戸籍法第113条)
  • 創設的届出が無効である場合(戸籍法第114条)

法律上許されないとは、戸籍に記載できない事項が記載されていること、錯誤があるとは、記載事項に事実との相違があること、遺漏があるとは、戸籍に記載すべき事項が抜け落ちていることを意味します。

創設的届出とは、届出によって効力が生まれる届出のことで、例えば婚姻届の提出で婚姻になりますし、協議離婚届の提出で離婚になるように、届け出た日が行為の起算となる届出のことを意味します。

余談ですが、創設的届出に対して報告的届出という届出があり、既に起こったことを報告します。例えば出生届は生まれてから提出するのであって、届出で生まれるのではありませんよね。同じように亡くなってから死亡届が提出されるのであり、死亡届によって亡くなったとしたら大変です。

戸籍訂正許可審判の手続

申立てができる人

訂正の理由によって2つに分かれ、戸籍の記載が法律上許されない場合と錯誤または遺漏がある場合は、戸籍の記載で身分上や財産上に利害関係がある人、創設的届出が無効である場合は、創設的届出の届出人と届出事件本人です。

届出人とは届書に署名押印をして届け出た人を意味し、届出事件本人とは届出の対象者を意味します。例えば出生届のように届出人が父または母、届出事件本人が子で異なる届出もあれば、婚姻届のように届出人が夫と妻、届出事件本人も夫と妻で同じになる届出もあります。

管轄の家庭裁判所

訂正の許可を求める戸籍のある地、つまり本籍地を管轄する家庭裁判所です。

管轄の異なる2つ以上の戸籍を訂正したいときは?

本籍地が異なり、なおかつその管轄となる家庭裁判所が異なるときは、原則に従えばそれぞれの家庭裁判所に戸籍訂正許可の審判を申し立てることになります。しかし、訂正事由が同じであれば、分けて申し立てるのは不合理です。

そこで、家事事件手続法第49条第3項の規定により、2つ以上の審判を1つの申立てに併合し、いずれかの本籍地の家庭裁判所に申し立てることができます。

このとき、申立てのあった家庭裁判所では、管轄外の事件も処理することになりますが、家庭裁判所は職権で自庁処理ができるため(家事事件手続法第9条第1項ただし書き)、管轄外の事件を処理することに問題はありません。

手数料・切手代

収入印紙で800円を審判申立書に貼り付けますが、訂正事由1つにつき800円です。その他に、数百円分の切手(家庭裁判所によって異なる)が必要になります。

必要書類等

  • 訂正したい戸籍の謄本(戸籍謄本除籍謄本、改製原戸籍謄本)
  • 申立人が訂正したい戸籍に記載されていなければ利害関係を証明する戸籍謄本等
  • 訂正したい内容により必要な資料

現在の戸籍に対する記載だけではなく、過去の戸籍の記載についても訂正を求めるときは、除籍になった戸籍の謄本(除籍謄本)、戸籍の改製が行われる前の戸籍の謄本(改製原戸籍謄本)も一緒に提出します。戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本は3ヶ月以内の発行に限られるので注意しましょう。

訂正したい内容により必要な資料とは、例えば無効な届出や誤った記載の届出が原因なら戸籍届書記載事項証明書は必要です。事案で全く異なるので、むしろ家庭裁判所に提出を求められてから揃えた方が良いかもしれません。

即時抗告

訂正を許可する審判に対しては、許可によって利害が生じる関係人からの即時抗告が可能です(許可を求めた申立人は当然に即時抗告できない)。

申立てを却下する審判に対しては、申立人から即時抗告が可能です。

戸籍訂正許可審判申立書

申立書は裁判所のホームページからダウンロード可能です。

家事審判申立書 – 裁判所(PDF)
※特定の書式が使われない家事審判事件に共通の申立書です。
※別ウィンドウまたは別タブで開きます。

申立書の書き方

事件名・裁判所名・記入日

事件名が入っていない共通の申立書なら、事件名は「戸籍訂正許可」と記入します。太枠の最初は申立先の家庭裁判所で、「家庭裁判所」と記載のある左に裁判所名、支部名や出張所名は、すぐ下にある「御中」と記載のある左に書きます。

申立人の記名押印

申立人が署名押印します。押印は認印で構いません。

添付書類

共通の申立書には何も記載されていないので、訂正したい戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本と、他に添付する資料それぞれの通数を書きます。専用の申立書でチェック欄があるなら、記載に従ってチェックと通数を記入します。

【記入例】
「戸籍謄本1通 除籍謄本1通」
「戸籍謄本1通 申立人の戸籍謄本1通」
「戸籍謄本1通 離婚届書記載事項証明書1通」
※添付書類とその通数がはっきりしていれば特にこだわる欄ではありません。

申立人

申立人の本籍(国籍)、住所、電話番号、氏名(フリガナ)、生年月日、年齢、職業をそれぞれ記入欄に従って書きます。ただし、訂正したい戸籍に記載されている申立人が申し立てる場合は、本籍欄の記載は不要です。

申立人欄の下に同じ欄がありますが、こちらは記載する必要がありません。

申立ての趣旨

定型的な書き方があり、ポイントは次の通りです。

  1. 本籍と筆頭者を含めて戸籍が特定できるように書く
  2. どの欄のどの記載事項を訂正したいのか特定できるように書く
  3. 「~することを許可するとの審判を求めます。」で締めくくる

※今後記入例を追記する予定です。

申立ての理由

訂正を求める経緯を説明します。つまり、法律上許されない記載、錯誤、遺漏、無効な届出によって、現在の戸籍の記載がされた経緯を説明するのですが、事案で全く異なります。なお、この欄の記載は、文の先頭に順番に数字を付けるのが通例です。

※今後記入例を追記する予定です。

申立ての趣旨と申立ての理由について

申立ての趣旨でも申立ての理由でも、きちんと書くには戸籍の知識が必須です。そして、どの欄を訂正して、どうすれば望む記載になるのかわからないと、申立ての趣旨と申立ての理由は書き方がわからないでしょう。

戸籍の知識を十分に持っている人は少なく、簡単な訂正であっても苦労するはずです。そこで、家庭裁判所の家事手続案内で、どのように申立書を書くべきかアドバイスを受けることをおススメします。

例えば、届出時の誤りによる簡単な戸籍の訂正なら、申立ての趣旨は「○○を××に訂正するとの審判を求める」、申立ての理由は「届出において錯誤があったため」とする内容でも問題ないでしょう。

しかし、例えば無効な婚姻届による戸籍を訂正するには、夫と妻のそれぞれの婚姻前の戸籍において、婚姻事項を削除しなくてはなりませんし、夫婦それぞれが除籍になっているので回復させて婚姻前の戸籍に戻らなくてはなりません。また、婚姻で新しく戸籍を作っていれば、その戸籍も削除(消除)が必要です。

このように、特に無効な届出による戸籍訂正では、訂正しなくてはならない内容が多く専門的な知識を必要とするのです。無数にある戸籍訂正のパターンを、当サイトで網羅できるはずもなく、家事手続案内を利用しましょう。

審判確定後の手続

戸籍訂正許可審判が確定したら、1ヶ月以内に審判書の謄本と確定証明書を添えて、役所に戸籍訂正申請をします。戸籍法第115条では、1ヶ月以内との規定はあっても、訂正申請者は特に規定されていません。

しかしながら、戸籍訂正申請はその前提として戸籍訂正許可審判の申立てを経由することから、審判の申立人が戸籍訂正申請をするべきと解されています。なお、戸籍訂正申請する役所は、本籍地以外に住所地や居住地でも可能です。

無効な届出に対する訂正は却下されるかも?

当事者に意思がない婚姻届や離婚届など、創設的届出によって生じた法的効果を無効として戸籍を訂正する方法は、戸籍訂正許可審判の確定による方法と、無効確認の訴えを提起(もしくは無効確認の調停を申立て)して、確定判決(調停による場合は合意に相当する審判の確定)によって行う戸籍法第116条の方法があります。

手続としては圧倒的に戸籍訂正許可審判が簡便ですし、戸籍法第114条の条文上でも戸籍訂正許可審判を利用することに制限はありません。

戸籍法 第百十四条

届出によつて効力を生ずべき行為について戸籍の記載をした後に、その行為が無効であることを発見したときは、届出人又は届出事件の本人は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍の訂正を申請することができる。

ところが、無効な届出による戸籍訂正許可審判と無効確認の訴えを同列に扱ってしまうと、相手方を必要とせず家庭裁判所に訂正許可を求める審判手続と、相手方と争う訴訟手続が、同じ戸籍訂正を実現する手法として存在してしまい違和感があります。

そこで、戸籍訂正許可審判においては、訂正を要することが戸籍の記載から明らかな場合や、戸籍訂正による影響が比較的少ない場合を前提としているようです(こうした運用方法に批判的な意見もあります)。

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