子の氏の変更許可

民法第791条では、子が父または母と氏を異にするときは、子が家庭裁判所の許可を得て戸籍の届出をすることで、父または母の氏を称することができるとされています。

子の氏の変更許可審判は、この家庭裁判所の許可を得るための審判ですが、子が親と同じ氏を称するのは、上記の通り法律で認められた権利ですから、基本的には審判申立書と添付された戸籍謄本での審理になり、許可されやすい審判です。

審判によって子の氏の変更が許可されると、役所に入籍届を提出することで、子は父または母の戸籍に入籍して同じ氏になります。なお、父母が婚姻中の場合は、家庭裁判所の許可がなくても入籍届によって子の氏の変更が可能です。

ちなみに、子の氏の「氏」は「うじ」と読みます。「し」で通じますが念のため。

申立ての最も多い事例は、離婚で夫婦の戸籍から抜けた側が、元配偶者の戸籍に残った未成年の子供を、離婚後の戸籍に入籍させたい場合です。婚姻中の戸籍筆頭者は夫である例が多いため、ほとんどは離婚した母が審判を申し立てます。

子の氏の変更許可審判の手続

申立てができる人

子が申し立てますが、子が15歳未満なら法定代理人が申し立てることも可能です。法定代理人とは親権者である父または母、後見人です。

管轄の家庭裁判所

子の住所地(居住地)を管轄する家庭裁判所です。対象が複数の子の場合は、そのうちの1人の住所地を管轄する家庭裁判所であればどこでも可能です。

手数料・切手代

収入印紙で800円を審判申立書に貼り付けます。その他に、数百円分の切手(家庭裁判所によって異なる)が必要になります。

必要書類等

  • 子の氏の変更許可審判申立書
  • 子の戸籍謄本
  • 変更後の氏となる父または母の戸籍謄本
  • 届出人の印鑑(認印可)

※戸籍謄本は3ヶ月以内の発行に限られるので注意しましょう。

即時抗告

申立てを却下する審判に対して、申立人から即時抗告が可能です。

子の氏の変更許可審判申立書

申立書は裁判所のホームページからダウンロード可能です。

子の氏の変更許可審判申立書 – 裁判所(PDF)
※別ウィンドウまたは別タブで開きます。
※リンク切れや内容変更について当サイトでは関知しません。

申立書の書き方

記入が難しい申立書ではないですが、子が15歳未満と15歳以上では少し違うので、その辺も含めて説明します。

裁判所名・記入日

裁判所名は申し立てる家庭裁判所を記入しますが、支部や出張所に申し立てる場合は、「家庭裁判所」と記載のある左に裁判所名を、すぐ下にある「御中」と記載のある左に支部名や出張所名を書きます。

申立人の記名押印

子が15歳以上なら子の氏名を書いて押印します。子が15歳未満なら法定代理人の氏名を書いて押印しますが、氏名の上に子の氏名(複数なら名を連ねる)を書き、法定代理人である旨を記入します。押印は認印で構いません。

【記入例】
「子の氏名 法定代理人」
「1人目の子の氏名・2人目の名 法定代理人」
「子の氏名 法定代理人 親権者 母(父)」

添付書類

申立人(子)の戸籍謄本、父・母の戸籍謄本にチェックを付けます。

申立人(子)

本籍(国籍)、住所、電話番号、氏名(フリガナ)、生年月日、年齢をそれぞれ記入欄に従って書きます。2人目以降の本籍・住所には、「※上記申立人と同じ」と記載されていますが、これは同じ場合は省略できるという意味で、異なれば記入が必要です。

法定代理人

子が15歳未満のときだけ記入する欄で、法定代理人と記載されたすぐ下にある父、母、後見人のいずれかに○を付け、本籍等を子と同様に記入します。なお、住所が子と同じ場合は「上記申立人と同じ」とすることもできますが、書いても問題ありません。

申立ての趣旨

左の()には子の現在の氏を、右の()には変更したい氏を記入します。2つの()の間には、父、母、父母の選択があるので、1~3の数字に○を付けます。

申立ての理由

「父・母と氏を異にする理由」と記載されている部分は、父か母に○を付け、1~7までの理由から選んで数字に○を付けます。7のその他を選んだときは理由も書かなくてはなりません。理由が生じた年月日も忘れずに記入します。

「申立ての動機」も1~6までの動機から選んで数字に○を付けます。6のその他を選んだときは理由も書かなくてはなりません。

審判確定後の手続

子の氏の変更許可審判が確定したら、審判書の謄本を添えて入籍届を役所に提出します。ただし、家事事件手続法第76条第1項の規定により審判書を作成せず、子の氏の変更許可審判申立書の余白に、申立てを許可する主文を入れ押印する運用もあります。

家庭裁判所によっては、最初から申立書に主文(許可する文言)が入っており、審判によって日時・裁判官名等の記載や押印が後からされる書式を使っています。言うまでもなく、主文が入っているだけの申立書を使って入籍届を出しても、審判で許可されなければ家庭裁判所の押印が無いので、役所に受理されません。

審判書が作成される場合でも、申立書に主文が記載された場合でも、役所に提出すれば入籍届は可能です。審判だけで子の氏が変更されるのではなく、変更した氏を持つ父または母の戸籍に入って効果が生まれます。

なお、審判書は後日郵送されるのが通常ですが、子の氏の変更許可審判は事案によって即日審判が可能で、なおかつ審判書の即日交付が可能な場合もあるほどです。即日審判や審判書の即日交付が可能であるかは、各家庭裁判所に聞いてみましょう。

離婚後に申し立てる場合の注意点

申立てができるのは子か法定代理人なので、離婚後に親権者ではなくなった側が自分の戸籍に子を入籍させたいときは、親権を持つ元配偶者に子の氏の変更許可審判申立てを依頼しなくてはなりません。

元配偶者が承知しなければ、親権者変更調停で自分を親権者とするか、子が15歳以上に成長してから、自らの意思で審判を申し立てる必要があります。

過去には、親権者と監護者が異なるときに、子の氏の変更許可審判の申立てにおいて、監護者を法定代理人に含めるとした事例もあります。判例があるからといって、常に監護者からの申立てが許されるものではなく、事情によって家庭裁判所で判断されます。

また、離婚後の氏が婚姻中の氏と同一の表記であっても、子の氏の変更許可は必要です。したがって、同姓同士が結婚して離婚した場合や、離婚時に「離婚の際に称していた氏を称する届」をした場合も、審判を申し立てなければなりません。

これらの場合は氏の表記が同一なので、例えば子の氏が鈴木で母の氏が鈴木なら、申立書の記載が「申立人の氏(鈴木)を母の氏(鈴木)に変更することの許可を求める」となりますが、その記載で正しい申立てです。

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