弁護士に依頼すると利用できる照会制度とは?

弁護士は、様々な場面で代理人として対応してくれるほか、基本的人権の擁護と社会正義の実現という使命を負う法律の専門職として、一般人では許されない多くのことが職務上可能とされています。

身近なところでは、職務上必要な範囲において、住民票や戸籍謄本の取得が可能なことは知られているのではないでしょうか。それ以外に、弁護士に依頼することで受けられるメリットとして、弁護士会による照会制度があります。

調停で弁護士に依頼するかどうかは、費用的な負担と調停に不成立がある以上、実利を伴わない可能性を考えれば、裁判を見据えた調停以外は微妙なところです。その判断には、弁護士会照会制度の存在も含めるべきでしょう。

弁護士への依頼については、別記事にしているので確認してみてください。

調停は裁判所手続であるため、調停の知識がないと、裁判所=弁護士を連想させます。しかし、調停は当事者の話合いを前提とする手続で、弁護士だけの出席も許されますが、望ましいのは本人の出席です。 だからといって、...

弁護士会照会制度とは

弁護士会照会制度とは、弁護士が受任している事件に必要な範囲で、所属する弁護士会を通じて、官公庁や企業などに必要な報告を求めることです。弁護士法第23条の2で次のように規定されており、23条照会とも呼ばれます。

弁護士法 第二十三条の二

弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。
2  弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

ここで注意したいのは、弁護士が照会権を持っているのではなく、弁護士は弁護士会に申出ができるだけに過ぎない点です。弁護士会が間に入って審査することで、弁護士による照会の濫用を防ぐ仕組みになっています。

なぜ照会制度があるのか

冒頭では、弁護士が基本的人権の擁護と社会正義の実現に使命を負うと説明しましたが、現実の争いでは、不利になりそうな情報は隠匿され、もしくは情報が不足して、依頼人の正当な権利が実現しないことは良くあります。

照会制度は、弁護士が必要な資料を収集し、その職務をまっとうできるように設けられました。弁護士の職務は、依頼人の利益を守ることですから、照会制度も依頼人の利益でしかないとする批判もあるでしょう。

しかしながら、照会制度によって依頼人の正当な権利を実現することは、依頼人個人の利益だけではなく、基本的人権の擁護や社会正義の実現に繋がるという、公益性を持っているとされます。

弁護士会照会に対する報告義務

弁護士法は、照会制度を規定しているだけで、照会先に対する義務規定はありません。となれば、誰でも思うのが「照会しても回答しないのでは?」という疑問です。

事実、照会制度は個人情報に関する内容が多く、個人情報保護法との兼ね合いもあって、照会を受けた当事者の同意がなければ回答を拒否するケースもあります。

弁護士会照会に対する報告義務については、明文の規定がないために軽視されがちですが、照会先には報告義務があるとする判例が複数存在します。

ただし、照会する内容にも左右され、回答することによる公共的利益よりも、回答の拒否で保護される利益が大きいと判断される場合、その限りではありません。

個人情報保護法との兼ね合い

個人情報保護法では、第16条と第23条において、本人の同意なく個人情報の目的外利用と第三者提供を制限しています。個人情報の目的外利用とは、個人情報の取得時に本人へ明示した利用目的を超えて利用しないことです。

例えば、商品を配達するために、購入者本人の同意を得て取得した氏名と住所を、商品の配達以外の目的で利用することはできないという意味です。

何らかの目的で取得した個人情報を、本人の同意なく弁護士会照会に応じて提供することは、個人情報の目的外利用であり、第三者への提供にも該当するのですが、いずれの場合でも「法令に基づく場合」は例外とする規定があります。

この「法令に基づく場合」には、弁護士会照会も含まれると解されており、省庁の公表する個人情報保護のガイドラインなどにもその旨が明記されています。

もっとも、弁護士会照会に応じる場合、前述のとおり個別の事案によって、公益性と個人情報保護による利益を判断して提供されることは言うまでもありません。

どのような照会が可能なのか

法律上は、照会内容についての規定はなく、「必要な事項の報告を求めることができる」と規定されているだけです。したがって、事件の解決に必要な範囲で、概ね照会先を問わずに照会可能です。

調停においては、相手方に関する次のような場合でしょうか。

  • 現住所や給与金額を勤務先に照会する
  • 預金残高を銀行に照会する
  • 保有株式を証券会社に照会する
  • メールアドレスから電話番号を電話会社に照会する
  • 電話番号から氏名や住所、料金振替口座などを電話会社に照会する
  • 生命保険の加入を保険会社に照会する
  • 子供の在籍や住所などを学校に照会する
  • 医療記録を病院に照会する

この他にも色々考えられますが、照会先が応じるとは限らないのは前述のとおりです。また、郵便物に関する郵便局への照会や、電話やメールなど通信に関する電話会社への照会は、通信の秘密から、ほぼ確実に拒否されるようです。

弁護士会照会の注意点

弁護士が弁護士会照会を申し出ることができるのは、受任した事件に関してのみです。つまり、事件処理の依頼(委任)がないと弁護士は動けません。

ただし、弁護士が正式に受任する前の相談段階や、依頼が示談交渉であっても、照会を利用することは可能になっています。

そうしないと、例えば相続財産が不明な状態で法律相談をしたとして、先に委任契約を結ぶと着手金が発生するのに、後で照会してみたら財産が僅かだった・無かったという場合は、依頼人の不利益があまりにも大きいからです。

なお、単に相手方の住所を調べて欲しいといった、照会そのものを目的とした依頼はできないので注意しましょう。あくまでも、依頼する事件があって、事件の解決に必要なら弁護士会照会制度を利用できるということです。

法律相談は無料でできる弁護士も多いですし、弁護士会照会が使えそうか聞いてみてから、依頼を判断してみるのも良いのではないでしょうか。今は弁護士探しに役立つサービスも充実しています。

法律全般サポート(日本法規情報)

  • 2
  • 1
  • 1
  • 0
  • 0